あやめは幻想、あやめは夢

 

あやめは幻想であり、あやめは夢だ。

 

私は、あの日見てしまった芸術作品に夢を見た。

 

そして、NEVERLANDというこの世とは隔離された空間から出た時に、慌てて書き残した。

 

 

円形の中心に静かに光が降り注ぐ。

その光を受けて、ぼんやりと何かが白く光る。

それが横になっている人だと分かってくると、身動きを取れなくなった。息をすることを忘れた。

始まる…見たい、でも、見てはいけない。そんなことを思う。

その時の私は、深夜、白鳥の湖の白鳥たちが美しく若い娘たちに変身する瞬間を見てしまった王子のようだった。

 

腕が光の方へ、上へと伸び、柔らかな曲線を描く指先の後を光の筋が通る様子に心を奪われていると、その人は立ち上がり、体を翻した。

そこには力強さがあった。

気づけば、中心に立つその人を囲むように顔立ちが整った青年たちがその人の冒険心とまだ見ぬ世界への希望や夢を包むように、それでいて、抑えつけるように現れた。

青年たちは隊列を組み、精霊のように軽やかに舞った。

彼らと共に歩くその人の身に纏っている天女の衣のような柔らかい布がふわりふわりと揺れる。揺れると、青や紫の模様が見えた。

 

その人は突然、丘を駆け上がった。

草原の真ん中に立ち、汚れのない純粋な空気を体いっぱいに吸い込み、地上へ真っ直ぐ届く光を誰よりも先に受け、世界で鳴る音の全てに耳を澄ますような…。

その姿は無垢な少年のようだったが、見える限りの世界を見渡すその人の目はギラギラと光っていた。

野望のようなものをその世界に見出していた。

 

そして、いつの間にか、その人の姿は別の丘の上に現れた。

その人は虹色の布がくくりつけられた旗を手に持ち、さっき見ていた方向をその旗で示した。風がその旗を揺らした。

 

その人の目は、丘を下りると、寂しさを見せた。

 

ここは乾いたただ荒野。

 

それでも前向いて歩こうや。

 

誰かの心に届くことを願うように、そう言った。

 

それを機に、彼の言葉はどんどん溢れ出し、声も大きくしっかりとしたものになっていく。

その人の決意、願い、祈り、思い、全てを乗せた言葉が紡ぎ出されていく。

 

その人は確かな足取りで地面を踏みしめていき、私の前を通り過ぎた。

私のことに気づいているのか、いないのか…その人は目にかかった前髪越しに、こちらを見たような気がした。

青年たちがまた集まり、その人の後ろで共に舞う。力を出し切るように、舞った。

勢いは増していき、揃ったその動きは迫るものがあった。

 

私は、直感的に感じる。

 

あぁ、彼らは間もなく姿を消す、と。

 

さっきまで近くにあったその人の姿は、遠ざかっていく。

その後ろ姿から、生命力と強い意志を感じた直後、その人の姿は見えなくなった。

そこには、青年たちの微かな気配と霧に包まれた空間だけが残されていた。

 

それは、あやめと言った。

 

あやめは幻想だった。そして、あやめは夢だった。

 

 

妄想をかき立て、1160文字の文章を書かせるくらいにNEWSのツアー『NEVERLAND』の加藤シゲアキの『あやめ』の世界観は凄かった。言葉にするのもおこがましい。

が、大阪で見たあの光景を誰にも伝えず、留めておくことは、出来なかった。

今日、ツアーの最終公演を終え、NEVERLANDもひっそりと門を閉じたのだろう。

笑顔があって、涙があったNEVERLAND。

ぼんやりとし始めている記憶がこれ以上霞まないうちに、ここに綴っておく。